ここでは体内の水分代謝異常(胃腸内の水分停滞や体液分布の偏り)によって発生する“水毒症状(水毒、水毒病)”についてお話します。
飲食物から摂取した水分が体内に吸収され,滞ることなく全身をめぐり,余剰の水分が順調に排出されれば何の問題も生じませんが,気候の変動や精神的ストレス,あるいは飲食面の要因などにより水分代謝が影響を受けて体内のあちこちで水分が停滞し,「痰飲」、「水湿」、「水腫」などと呼ばれる種々の病症が発生するようになります。“流水は腐らず…”という諺がありますが,これは人体内においても同様です。
水が毒(病気の原因)になるなどは一般には考えにくいことでしょうが,実際には水毒によって発生する症状は沢山あります。これは言わば,体内で発生する水害です。人体の正常な水分割合は6〜7割程度(体格差や運動量などにより異なります)ありますので,水毒が関わるトラブルは全ての病症の中では最も多いと言えます。
傾向としては,水分が不足して発生する病気よりも,水分が体内に停滞して発生する病気の方がはるかに多いです。
水分は確かに身体にとって必要不可欠ですが,摂り過ぎますとやはり問題が生じます。例えば,植物には水が必要ですが与え過ぎると根が腐りますし,河川も溢れると洪水になります。
“四肢(手、腕、脚、足)のむくみ、四肢関節の腫れと痛み、胃内停水(胃の水分停滞)、下痢、嘔吐、めまい、動悸、メニエール病、高血圧、腎臓病、痛風、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、痰、鼻水、膀胱炎、前立腺異常、おりもの、冷え、身体の重だるさ、頭重、尿が少ない”などは,その多くが水分代謝異常によって引き起こされる“水毒症状”です。
また当然のことですが,“水毒症状”は水分(水分を多く含むすべての飲食物)の過剰摂取も原因の一つとなっていることを知っておく必要があります。
東洋医学では,むくみ(浮腫)のことを水腫と呼びます。水分が体内のあちこちに偏在して発生する病症でして,一種の小便不利(尿が充分に排泄されいないこと)によって発生する症状です。
この症状は人によって現れ方も異なりますし,程度も異なります。よく見られるものとしては,朝起きた時などに瞼(まぶた)が腫れぼったくなっていたり,手がむくんで動きが悪くなるなどの症状,また夕方になると足が腫れぼったくなって靴がきつく感じるなどの症状があります。朝のむくみは主に前日の就寝前の飲食が,また夕方の足のむくみは日中に摂った水分がそれぞれ影響しやすいです。
一時的(発生時間が短い)なむくみであればそれほど心配は要りませんが,頻繁に繰り返したり,なかなか消失しなかったり,あるいはむくみ以外に体が重怠い、尿が少ない、軟便・下痢、頭重、寝汗、痰が多いなどの症状を伴う場合は,漢方で言う「痰飲病」や「水気病」に属す病症ですので,治療の必要が生じます。
また,高齢者の足のむくみの場合は比較的急速な腎機能の衰えが考えられますので早めに治療すべきです。
さらにまた,慢性関節炎などで関節部に水が溜まって腫れて痛むといった症状がありますが,これも一種のむくみの病症でして,とくに繰り返しこの症状を発するものや慢性化したものは,患部の治療だけでは治りにくい傾向があります。このような場合は,全身的な観点で治療を進めなければなりません。
単なる利尿剤、鎮痛剤、消炎剤などはつらい症状を抑えるには有効ですが,これらのみでは病症本体の改善はできませんので延々と使い続けることになります。
更新:2023/08/09
この病症は東洋医学では「関節水腫」あるいは「下肢水腫」と呼ばれる,むくみ(浮腫)の一種です。関節組織内の水分代謝が悪くなって発生する症状でして,膝や足首の関節などに多く現れます(水は重力を受けて下方向に集まりやすくなるためです)。
同時に痛みを発するものもあれば,ただ重苦しく感じるだけでほとんど痛みを発しないものもあります(重度の心臓病や腎臓病では,関節のみならず全身浮腫に至ることもあります)。
よく見られるものとして3つの原因が考えられます。
1.体表部(あるいは皮下)に水分が停滞し,それが時間とともに下半身に流れて膝関節や下肢全体に水がたまるというものです。汗が出やすく足が重だるく感じます。急性のものと慢性のものがあります。
2.主に胃腸の水分吸収機能が弱ってそのまま胃腸内に水分がたまり,それとともに体内水分の停滞をまねき,それが膝関節や下肢に流れて膝関節水腫や下肢水腫を起こすというものです。これには軟便や下痢を伴う傾向があります。
3.腎の一種の機能低下(即ち,腎虚)による下肢のむくみです。これは一般に中年以降で見られる症状です。これには同時に夜間頻尿を伴うものが多いようです。
水のたまり方が著しく膝を曲げることができないほど重い場合はそのまま放置できませんので,先ずは水を抜く方法を講じる必要があるでしょう。しかし,水がたまったからといってその度に水を抜くだけの処置を施したり,尿量が少ないからといって利尿剤を服用し続けるようなことは決して根本治療にはなりません。根本治療には,先ず水のたまる原因を取り除くことが大切です。
漢方はあくまでも根本治療を目標とします。また,治療では薬の力を借りることは必要ですが,薬を服用することだけが治療のすべてではありません。発病要因となる生活面の改善も必要となります。
生活面の改善についてお話ししますと,関節に水がたまりやすい人は,日頃から塩分(および味の濃厚な食品)、水分(水そのものだけでなく,清涼飲料水、果物、緑茶・紅茶、コーヒー、味噌汁、スープ類などを含みます)、水分が多く含まれる食品を摂り過ぎないよう注意が必要です。これは体内に停滞している湿気(余剰の水分)をできるだけ少なくする必要があるためです。
このように注意しつつ,必要な漢方薬で全身の水分代謝を高め,尿の排泄を正常に戻すことによって「関節水腫」は改善されます。
更新:2023/07/26
「胃内停水」という言葉のとおり,胃内に水分が停滞して発生する病症です。胃腸からの水分吸収が悪い場合や,日頃から水分を摂り過ぎる傾向がある方に現れる症状の一つです。
その特徴は,身体を動かした時などに発生する振水音(しんすいおん:胃部のチャブチャブ音)です。“希薄物の嘔吐、胃液が口中に上がる、食欲不振、胃もたれ、胃部(みぞおち)の動悸、尿が少ない、むくみ、めまい、頭痛・頭重、下痢、背部痛、腰痛、体が重く怠い、乗り物酔いしやすい”などを伴うことが多いです。
日頃から冷たい飲み物、冷えた食品、なま物などの摂取量が多い方に現れやすい症状です。また,この病症は「メニエール病」でもよく見られます。
本記事は「胃腸病」中の記事とほぼ同じ内容です。その他の胃腸病についても述べておりますので併せてご覧ください。
更新:2023/08/09
唾液の分泌が必要以上に多いのは,胃腸が冷えている(機能低下している)場合に多く見られる現象です。中医ではこの病症のことを「裏寒(りかん)」または「脾胃虚寒(ひい・きょかん)」また或いは「痰飲病(たんいんびょう)」と呼んでいます。
人によっては“痰がからむ、吐き気、嘔吐、胃痛、軟便・下痢、めまい”などの症状を伴いやすい他,“乗り物酔いをしやすい”などの特徴や“頭痛・頭重”を伴うケースも見られます。
一種の水毒によって生じる症状でして,前述の「胃内停水」とも関係があります。
水分や水分を過分に含む食品を多く摂った後や,日頃から水分を摂り過ぎる傾向があり,腹部が冷えやすい方に現れやすい症状です。
本記事は「胃腸病」中の記事とほぼ同じ内容です。その他の胃腸病についても述べておりますので併せてご覧ください。
更新:2023/08/09
本病の発生は,前述の「胃内停水」の病症と深い関係があります。“激しいめまい、嘔吐、どうき”などを主症状とし,“むくみ、頭痛・頭重、身体が重だるい、胃がチャブチャブする”などの症状を伴うことが多いです。
これも一種の水分代謝障害によって発する症状ですので,この症状を発しやすい人,あるいはこの病気の人は,特に水分を摂り過ぎないよう調節しましょう。
「メニエール病」という病名に驚くことはありません。水毒病は全体的に治療に時間を要することが多いですが,これは改善が難しい病症ではありません。
更新:2023/08/09
高血圧症の発生には非常に多くの原因が考えられますが,ここでは水毒症状(一種の水分代謝異常によって発する症状)として現れる高血圧症についてお話しします。
本病は中年以降に比較的多く見られます。およそ現代医学の治療で「降圧利尿剤」(すなわち,尿の出をよくして血圧を下げる薬)を用いるケースがこれです。
漢方治療の場合は,ただ単に血圧を下げるというのではなく,高血圧の原因となる体内の過剰の水分を取り除き,水分代謝と血液循環を正常に導き,全身のバランスをとりながら治療を進めます。また,この様な方は高血圧症だけでなく他にも幾つかの症状を併せ持つことが多いため,それらの改善も同時に行います。
更新:2023/08/26
漢方医学では,この症状のことを「小便不利」と呼びます。同時に全身(特にまぶたや手足など)の皮下(皮膚組織の内側)にむくみが現れやすくなります。
水分代謝には主に肺(皮膚)、脾(胃腸)、腎、膀胱などの臓腑(現代医学的には心臓も)が深く関与していますが,小便不利はこの中のどの臓腑が機能異常をきたしても発生します。
(夏の暑さやスポーツなどで大量の汗をかいた後はそれに比して尿量が少なくなりますが,このように一時的な場合は正常な代謝の現れであることが多いです。)
胃内停水によるものや,体表部(全身の皮膚や腕脚)の水分停滞によるものなど種々の原因があります。
小便の出の悪い人は飲食面で塩味や甘味の濃厚な食品は控えなければなりません。水太りの方では他の病症を併発しやすくなるため特に注意が必要です。
また,小便を多く出そうとして水分を多く摂るようなことはしないで下さい。水分を摂ることで少しは尿量や回数が増えたように感じますが,体内に停滞する水分もさらに増やすことになり,結果的には症状を一層悪化させることにつながります。
単に合成の利尿剤を使用してもリバウンドしやすく,長期の使用で腎臓を傷つけます。どうしても改善できなければ,漢方治療をおすすめします。
更新:2023/08/26
舌の表面に見られる白い苔(こけ)状の組織を,漢方医学では「舌苔(ぜつたい)」と呼びます。舌の観察によって全身の大まかな状態を知ることができますが,特に胃の延長上にある器官ですので,胃の状態が最もよく反映される部分です。
舌苔が厚くなるのは,胃腸に水毒がある時に現れやすい現象でして,胃の働きが正常な場合には微かに薄く付着しているだけで,厚く付着していることはほとんどありません。
(糖分やトウガラシの過食、強い酒の過飲、過度の喫煙などにより,とくに自覚症状は無くてもこれらの反復刺激を受けて舌苔が厚くなることはあるようです。ただ,自覚症状が無いとは言え,正常とも言い切れません。やはり適度な節制は必要でしょう。)
治療では舌質(ぜっしつ、ぜつしつ:舌の本体)の色合い、堅さ、むくみなどから全体的な情況も確認しますが,舌苔の異常だけで必要な薬を選定しきれるものではありません。
言い換えますと,舌苔の異常は疾病の治療を行う際の判断要素の一つであり,様々な病症に付随する特徴です。
更新:2023/08/26
この病症は,中医では水分代謝で重要な役割を担っている臓腑の中で,「肺」の機能が乱れて発生すると考えます。この「肺」には,空気に直接触れることがある鼻、喉、気道、肺臓、皮膚、気道粘膜などの働きも含まれます。
※東洋医学(中医や漢方)で言う五臓五腑(五臓六腑)は,現代医学で言う同名の臓器や器官とは一致しません。現代医学では解剖学的に物体で分けているのに対し,東洋医学では働きで分けられています。
肺の病症には様々な種類がありますが,その一つである「肺寒」と呼ばれる病症(肺が冷えて水分代謝が低下する病症)で最も多く見られます。とくに“アレルギー性鼻炎”でよく見られます。また,この症状が慢性化している場合は,身体が冷えやすく,いつも胃中に余剰の水分が停滞していますので,治療・改善・予防の一環として,日頃から水分を多く含む食品、飲み物、なま物(なま野菜、果物、魚貝類)を摂り過ぎないよう注意が必要です。
更新:2023/08/26
広くは「痰気互結(たんきごけつ)」と呼ばれる病症の一つでして,具体的に咽喉部に梅の種(肉片と表現される場合もあります)がひっかかった感じがして,吐き出そうとしても出ず,飲み込もうとしても下がらず,しかし飲食には差ほど影響もなく,時に吐き気を催したり痰がわいて咳き込んだりするといった特徴が現れるものを「梅核気(ばいかくき)」と呼んでいます。
食道付近に停滞している水分が何らかの原因によって代謝異常を引き起こし,粘稠質の痰に変化して発する病症です。実際には喉に隆起やポリープが現れることもあります。
心配事やつらい事が長い間解決できずにいる場合に発症しやすい特徴もあり,胃腸の具合、天候、情緒の変化などの影響を受けやすく,症状はその日によって強く感じたり軽くなったりします。
元々は神経症状の一環として女性に多く見られましたが,近年では男性にも現れることが増えてきている感があります。
「やっと喉(胸)の痞えが下りました」や「溜飲が下がる思いです」などの言葉があるとおり,原因と共に自然と解決(治癒)する場合もありますが,心の傷が深いために症状が残ってしまうこともあります。
原因としての境遇は薬で解決できるものではありませんが,症状であるこの異物感は少しずつでも改善させた方が良いでしょう。悪化させますと,この症状が新たな不安材料となりストレスとなり,そこから悪循環が生じる恐れが考えられるためです。
更新:2023/08/26
これは申すまでもなく女性特有の病症です。薄い水様のもの、白色で粘液なもの、黄色帯びたもの、血液が混ざったものなどがあり,さらには冷えが原因であったり,炎症、痒み、痛み、臭いなどを伴う場合もあり,組み合わせを考えますと実に様々です。これは水毒(体内に慢性的に停滞した余剰の水分)が原因となって現れる病症です。
軽い場合は,洗浄したり膣錠や軟膏を使用した局所手当で治まることがありますが,原因をそのままにしておきますと,発症条件が揃った際に再発することも多々あります。
水分代謝の悪い人に現れやすい症状ですので,局所の症状だけにとらわれず,全身的(全体的)な視野で治療を考えなければなりません。
この症状は一種の「生活習慣(とくに飲食の習慣)」が原因となっている場合が多いため,治療の一環としてこれらの調整も必要となります。
更新:2023/08/28
慢性の皮膚疾患では,患部から浸(滲)出液が絶えずにじみ出ている状態を多く見かけます。これは体内の水分代謝異常によって生じた水毒が原因となっている特徴です。
体内の水分代謝が正常な場合は,摂取した水分の多くが汗や尿となって排泄されますが,これが乱れますと余剰の水分が体内に停滞してしまいます。
この状態で湿疹などを発しますと,隆起しやすくなったり,患部から浸(滲)出液が出るようになり,ジクジクして傷口も塞がりにくくなります。
このような特徴をもつ症状は一種の「生活習慣(とくに水分の過剰摂取)」が原因となっている場合が多いため,治療の一環としてこれらの調整も必要となります。
更新:2023/08/28
水のような下痢を発する病症です。消化器(とくに小腸)の水分の吸収力が低下した時などに発生します。これも一種の水分代謝障害によって発する症状です。人によって「腹痛・嘔吐・めまい・どうき・小便不利・身体が重い・頭痛・頭重・発熱・軽い寒気」などを伴うこともあります。また,この症状で胃腸の消化吸収機能が極端に弱ったものでは,未消化物が混じって出ることもあります。水様性下痢は大きく分けて消化器だけが原因のもの(これを脾虚湿滞という)と脾と腎が関与したもの(これを脾腎両虚という)があります。前者は急性のものに見られ,治療はそれほど難しくありません。後者は慢性化したものに見られ,このような人は栄養分の消化吸収が十分に行われませんので,痩せ気味でなかなか太れず,比較的体力が無く,病気に対する抵抗力も弱く,風邪などを引きやすく,貧血傾向も見られます。一般に慢性化したものは,体質的な面も原因していますので,ある程度の長期治療が必要となります。
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漢方医学には「湿が集まって水となり,水が集まって痰となる」という考え方があります。つまり,体内に停滞する湿気や水分は,いずれは痰となって新しい病症を引き起こすということです。痰には有形のものと無形のものがあります。「有形の痰」には,気管支喘息や一時的な咳などで喀出して実際に目で見ることのできる痰が含まれます。「無形の痰」というのは,実際に目で見ることのできない痰を指します。例えば,乗り物に酔いやすい・原因不明の目まい・頭痛頭重・吐き気・息切れ・どうき・精神異常などの病症はみな無形の痰によるものと考えられています。このように痰によって発生する病症は沢山あります。
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これも一種の水毒症状と考えて良いでしょう。漢方医学ではこの病症のことを「膀胱虚寒証」と呼んでいます。また膀胱は腎機能の作用下でその機能が調節されていますので,「夜尿症」の根本原因はむしろ腎機能の未成熟にあるといっても過言ではありません。また,他の原因によって発するものもありますので,慎重な判断が要求されます。
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これもまた水分の代謝が順調に進まないことによって発する病症でして,一種の水毒症状といえます。この病症の発生には,直接的には膀胱の機能異常が関係していますが,その根本原因はやはり腎機能の衰え(これを「腎虚」という)にあります。一般には,急性膀胱炎を起こした時のような激しい排尿痛や血尿などの症状は伴いません。前述の子供の夜尿症の原因が腎機能の未成熟にあることに対して,高齢者の場合は腎機能の衰えが原因になっていると考えられています。夜間頻尿も同じ原因で発する症状です。大人の場合は,早めの治療が肝心です。
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漢方医学では,関節痛や筋肉痛のことを「痺証(ひしょう)」と呼んでいます。体の陽気が不足して水分をめぐらせる働きが低下し,あるいは外界からの湿気が体内に侵入し,腰や下半身に停滞して発する症状です。腰から下の冷えとむくみ・痛みは,身体の陽気不足に寒湿の病邪(すなわち,冷えと湿気の病邪)が加わって発生することから,「寒湿痺証」と呼んでいます。その症状特徴は,「足が重だるく,冷えると痛みが増悪し,温まると痛みが軽減する」という点です。腎機能の低下が関与しているケースもあり,この場合は高齢者に多く見られます。もし,若い人にこの症状が見られるのでしたら,それは日頃から水分の摂取量の多すぎる方だと思います。漢方医学には“寒は下からやって来る”という格言があります。人は立って生活しますから,いつも下半身は寒冷に脅かされていることになります。冷え症の方は,特にこのことを知って下半身を冷えないように常に注意して下さい。この症状が長期にわたる方はぜひご相談下さい。
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唇やほっぺたの内側,あるいは歯肉や舌などによく炎症を起こす人がいます。繰り返し発するものを『アフター性口内炎』と言います。漢方医学ではこの病症の発生原因が胃熱(一種の胃の機能過亢進)、心火旺(一種の心機能過亢進)、肝胆湿熱(一種の肝・胆の機能過亢進)、陰虚火旺(一種の腎の機能異常)などと深い関係があると理論づけています。事実,これらの原因に当てはめて治療しますと必ず治ります。また,本病の中で,とくに唇や頬の裏側に赤く腫れて痛みの強いものは,胃に停滞した湿気も深く関与しており,この病症を「中焦の湿熱証」と呼んでおり,治療では,体内に停滞している湿と熱の病邪を取り除くことに重点を置きます。この症状を発しやすい人は食生活に問題があります。治療はそれほど難しくありません。口内炎を起こしているときは,あるいは治療時は,とくに飲食面に気をつけ,食べ過ぎ・飲酒・トウガラシ料理・油っこい物・味の濃い食品等をできるだけ控える必要があります。
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体力が低下し,とくに皮膚体表部の抵抗力が低下し,汗腺のしまり具合が弱くなった時などに現れる症状です。「不眠・どうき・体がだるい・むくみ・微熱・節々の痛み・頭痛頭重」などを伴うものもあります。また寝汗は水分の摂取量の多すぎる場合にも現れることがあります。いずれにしても寝汗が長引くものは体力の低下,抵抗力の低下を示しますので治療すべきでしょう。
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体内の水分代謝に深く関与している臓腑の一つに「脾(ひ)」があります。脾はもともと消化器官を代表する地位にあり,消化機能全体に深く関与してこれを調節し,体内への栄養分と水分の吸収に対してとくに重要な役割を果たしています。そのため,脾が虚してその働きが弱りますと,栄養分や水分の吸収と体内の水分の運行が支障をきたして,身体のあちこちに水分(すなわち湿邪)が停滞するようになります。この病理現象を「脾虚生湿」と呼んでいます。湿は水に属しますので,これが体内に停滞すると,頭・手足・全身が重だるくなります。このときは食欲不振・軟便下痢・疲れやすい・むくみなどの症状を伴うこともあります。また,このような方は,雨天など湿気の多い日に一層この症状が顕著に現れます。平素は水分の過剰摂取に極力注意をはらうべきでしょう。この症状を慢性的に持っている人は,漢方で早めの改善をおすすめします。
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