婦人病

 中国の「千金方」という漢方古書には,“女性は男性に比べて二倍も病気にかかりやすく,十倍も治しにくい”と書かれています。それほど昔から女性の病気は複雑なものとされています。事実,私どもへ治療相談に来られる方は圧倒的にご婦人の方が多いですし,治療も男性より少々時間が必要です。ここでは,とくに女性に多く見られる各種の病症について,漢方医学の見地からお話します。漢方薬は婦人病に対して欠かすことのできない貴重な治療薬です。

● 月経痛(月経困難症、生理痛)

 下腹部には子宮があり,この部位には肝の経絡が通過していますので,この付近に痛みの症状がある場合には子宮の異常を考えるだけでなく,「肝」の働きに問題があるということも考慮する必要があります。またこの部位には月経に関係なく,人によっては普段でも血(おけつ:血の道症、血液循環障害)による疼痛(刺すような痛み)が見られることがあります。月経痛は血が原因で発生する代表的な病症です。月経時に子宮内に停滞した血(黒ずんだ血液の塊、或いはレバー状に固まった血液)が排出するまで痛みが続き,排出し始めると次第に痛みが軽減します。月経痛の程度や血の量には個人差があり,中には痛みだけで血液の塊が見られないケースもあります。 また,痛みの発生は冷えとも関係がありますので,日頃から月経痛の激しい方は,少なくとも月経の5〜7日前からは身体を冷やさないように心掛ける必要があります。何れにしましても,月経痛は子宮に異常があることを知らせる一種の信号ですし,子宮筋腫や子宮内膜症の原因にもなりますので,特に血が原因で発する月経痛は早めに治すべきでしょう。また,私共の経験では,コーヒーをよく飲まれる方に,この血症状が多く見られるようです。コーヒーの過飲(飲み過ぎ)や常飲(毎日の飲用)は血を発生する原因の一つと考えられますので,ご注意ください。
 激しい月経痛でお悩みの方は,ぜひご相談ください。

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● 月経不順

 一般に月経は一定の間隔(平均28日周期)で来潮しますが,時にこの間隔が一定せず,一ヵ月間に二回もあったり、数ヶ月に一回しか来潮しないケースもあります。不妊症や不育症などに影響を及ぼす原因にもなりますので,大きな乱れがある場合には改善が必要な病症です。
(この病症は,西洋医学の分野ではホルモンの分泌異常や自律神経の失調と考えますが,漢方医学の分野では「肝」と「腎」の病症として捉えて治療を行います。)

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● 月経時の身体不調

 月経の前後に身体の調子が大きく乱れることがあります。例えば,頭痛、めまい、吐き気、便秘、下痢、疲労・倦怠感、むくみ、イライラ感、憂うつ感、動悸、食欲不振(または亢進)、腹痛、腹部膨満感、腰痛、股関節痛、微熱感(のぼせ感)などです。漢方医学では,月経の調節は「肝」が司っていると理論付けており,その調節機能のことを“疏泄(そせつ)”と呼んでいます。月経が潮の満ち引きのように一定の間隔で来るように調節されているのは,この肝の“疏泄”が正常に働いているからなのです。しかし,「肝」には精神的ストレスの影響を強く受けやすい性質があり,そのため強い精神的ストレスを受けると,この“疏泄”が正常に働かなくなり,月経が一定の間隔で来るように調節することができなくなってしまいます。生理の直前に強い精神的ショックを受けて月経が止まってしまうということがあるのはそのためです。この“疏泄”は,「心」、「脾・胃(胃腸)」、「肺」、「腎」などのような自律神経で働いている臓腑の機能をも調節していますので,“疏泄”が正常に働けなくなると,その影響がそれらの臓腑の機能にまで影響して非常に複雑な病理を発生させることになります。上述のように多くの症状が現れるのはそのためです。もちろん,これらには個人差があり,なり易い人となり難い人があります。一般に性格が神経質な人ほど,またストレスの影響を受けやすい人ほど陥り易い傾向があります。この種の症状にも漢方薬は良く奏功します。お悩みの方,ぜひ当店の漢方治療をお試しください。

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● 月経前の乳房の脹りと痛み

 これは,月経が近づくと乳房や脇が強く脹って痛むという症状です。中には同時に“シコリ”ができることもあります。この症状が現れる方は,月経が近づくとイライラして怒りっぽくなり(普段もその傾向が見られる),長時間我慢し続けたり緊張し続けるなどの状況に遭うと腹にガスがたまりやすく,時には腹痛を起こしたり,下痢や便秘を起こしたりします。この種の症状を発しやすい方は,いわゆる自律神経の調子が乱れやすい方でして,普段でも情緒不安定に陥りやすく,常にどこか身体の不調を訴える傾向があります。漢方医学ではこれを「肝」の病症として捉えて治療します。ただし,治療する際には全身的な視野で病気を捉え,個々人の症状の違いに基づいてお薬を選定しなければなりません。この種の症状は,“乳腺炎”や“乳癌”などに発展する可能性がありますので早めに治療すべきでしょう。漢方治療で改善できますので,ぜひご相談ください。

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● 月経期に皮膚症状(にきび・吹出物など)が悪化

 月経が近づいた際,顔に“にきびや吹出物”ができたり悪化したりする場合があります。漢方医学では,“にきび”のことを「粉刺(ふんし)」と呼び,この症状が「胃」、「肝」、「肺」などの臓腑の機能失調と関係があると理論付けています。特に月経が近づくと“にきび”が悪化する傾向のものは「肝」の機能失調と深い関係があると考えています。この場合,現代医学の肝機能検査で異常が見られるかどうかとは関係がありません。漢方薬はこのようなケースにも効果を発揮します。

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● 月経過多と過少

 月経量が非常に多い人と少ない人がいます。一般に,月経量は月経が始まって二〜三日目までが比較的多く,その後は徐々に少なくなって七〜八日目までに終わります。もちろん人によって若干違いがあります。月経量が多すぎるのは「熱証(ねつしょう)」や「血証(おけつしょう)」などに多く見られ,少なすぎるのは「気滞証(きたいしょう)」・「血虚証(けっきょしょう)」・「血証(おけつしょう)」などに多く見られます。これらは漢方医学の専門用語ですので,分かりにくいかも知れませんが,月経量の過多と過少にはそれぞれ幾つかの原因があるということを理解して戴ければ充分です。また,月経期以外の不正性器出血というのもあります。いずれも漢方薬で改善できます。

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● 陰部掻痒症とおりもの

 これもまたよく見られる症状です。痒みが強いために長時間座っているのが辛いというケースもあります。黄色を帯びた“おりもの”を伴うものが多いようですが,伴わない場合もあります。また,中には同時に“肛門のカユミ(肛門周囲炎・カユ痔)”を併発しているケースもあります。これは,漢方医学で言われる「湿熱証(しつねつしょう)」という病症に多く見られる症状です。「湿」は体内に停滞する余剰の水分や過剰の分泌物を指し,「熱」は炎症を意味します。また,これとほとんど同じ原因で発するものに男性の「陰嚢湿疹」があります。この種の病症は一種の「生活習慣(過労や飲食の習慣)」が原因となっている場合が多いため,治療時はその点についてのチェックも必要になります。例えば,日頃は便秘に注意し,脂っこい食品、濃い緑茶、コーヒー、アルコール飲料、トウガラシを含む食品などをできるだけ控え,菜食中心の食事に心掛けるようにしなければなりません。
 本病は,漢方治療で充分に改善できますので,お悩みの方はぜひご相談ください。

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● 膣カンジダ症

 これは,水虫や田虫の原因でもある菌類の繁殖によって起こる病症の一つでして,女性に多く見られる“膣カンジダ症”はその代表的な疾患といえます。一般には“おりもの”と“痒み”を伴うことが多いようです。女性の「陰部掻痒症」にこの病症を併発しているケースが多く見られます。“おりもの”の量には個人差があり,その性質は“黄色帯びているか否か、粘性が強いか否か”などでも異なります。漢方医学では,この病症のことを「湿熱下注証(しつねつげちゅうしょう)」の一種と考えます。現代医学では「洗浄」や「膣錠」などを用いた治療が主体になりますが,この方法ではなかなか治癒し難いのも現状です。漢方治療ではもっと全身的な視野でこの病症を捉え,漢方薬の“内服”と局所の“洗浄(煎じ液を用いる)を併用する方法を用いて治療することも多いです。経験上,この種の治療法は効果的ですので,今まで色々と治療を試みたが効果が得られなかったという方にも是非お試し頂きたいです。

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● 冷え症

 「冷え症」は特に女性に多く見られる症状ですが,これは元々身体の陽気が不足している人に起こりやすく,手足が最も冷えるという方は,この陽気が手足にまで行き渡らない状態と言えます。分かりやすく説明しますと,温かい体温を運んでいる血液が手足の先までうまく循環していないということです。普段から気温の低下にはとくに敏感で,夜間は手足を縮めて寝、冬は霜焼けを起こしやすく、冷たい物に触れたがらず、冷たい飲み物を嫌い、寒冷に遭うと手足の指が白くなり(これを“四肢逆冷[ししぎゃくれい]”と言います)、酷ければ爪の部分が紫色を帯びます(これを“寒凝血[かんぎょうけつお]”と言います)。時には強い冷えのために痛みを発したり,足腰の冷えが下腹部や腰部にまで及んで腹痛や腰痛を起こすケースもあります。女性では,月経痛(生理痛)があったり月経が遅れたりし,貧血の傾向も重なりやすくなります。現代医学にはこの種の一連の症状に的確に対応する治療法が無いため,理想的な治療は難しいのですが,漢方医学では比較的得意とする分野です。

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● 更年期障害

 「更年期」とは,一般に四十五歳から五十五歳頃に掛けての期間を指します。女性はこの時期になりますと,月経閉止と同時に女性ホルモンの分泌が急激に低下するため,一部の女性に自律神経失調症状を主症とする不定愁訴が現れ,とても辛い思いをするようになります。症状が多岐に渡ることから,「更年期症候群」とも呼ばれています。つまり,群をなして多くの症状が現れるというわけです。検査を受けてもとくに異常が見当たらず,他人に症状を訴えてもなかなか理解してもらえず,一人憂うつな気持ちで毎日を過ごします。中にはうつ症状のため死にたいほど辛くなるケースもあります。これを「更年期うつ症」と呼んでいます。一般によく見られる症状は次のようなものです。“イライラ、憂うつ感、不安感、精神不安定、のぼせ感、不眠、動悸、焦り感、対人恐怖症(人に会いたくない)、疲労・倦怠、食欲不振、腹部膨満感、下腹部痛、強い肩こり、腰痛”など。現代医学では多くがホルモン治療を試みますが,「更年期障害」は漢方治療でも充分に改善できますので,ぜひご相談ください。

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● 月経時に血の塊が多く混じる

 月経時の血液に血の塊が多く混じったり,血液がレバー状になって出ることがあります。これに月経痛が伴うものと伴わないものがありますが,漢方医学ではこの病症を女性の代表的な「血証」の一つと考えます。血は更に様々な循環障害を引き起こし,また実際に「子宮筋腫」、「子宮内膜症」、「不妊症」、「不育症(流産や未熟児の出産など)」などの原因にもなり得ますので,やはり早期に改善すべきでしょう。

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● 無菌性膀胱炎

 体がひどく冷えた時や疲れた時などに“排尿異常”や“下腹部の違和感”を発しやすい方がいます。一般に,細菌感染によるものは抗生物質を服用すれば大半は治るのですが,中には細菌が既に無いにもかかわらず依然として排尿痛や残尿感がいつまでも続くというものがあります。これは尿道や膀胱内の粘膜に炎症が起こりやすく,治りにくいという一種の虚弱体質的な疾患と言えます。このような方は身体の陽気を盛んにして血液の循環を改善し,抵抗力を補う方法で治療する必要があります。漢方薬にはこの種の作用を持つものが沢山ありますので,体質と症状に適合したものを用いれば改善できます。

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● 月経時の鼻出血

 月経が来るたびに,鼻血が出るという人がいます。鼻出血を起こす時は普通より月経量が非常に少なくなったり無かったりする傾向が見られます。一名「代償月経」あるいは「逆経」とも言われています。これもまた漢方薬で改善できます。

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● 月経時の下痢と吐き気

 月経に入ると胃腸の調子が悪くなり,吐き気をもよおしたり,下痢を起こしたりする方がいます。これは,「肝」と「脾」、及び「肝」と「胃」の調和が一時的に不調になるために発する症状でして,漢方医学では前者を「肝脾不和(かんぴふわ)」、後者を「肝気犯胃」(かんきはんい)」と呼んでいます。漢方医学では,月経の調節に「肝」が深く関与していると考えており,「肝」の働きが乱れやすい人はその影響によって「脾・胃(胃腸)」の消化・吸収の働きを失調させ,主として月経時に“下痢”や“吐き気”を発し易くなると理論付けています。この特徴の改善も漢方医学の得意分野と言えます。

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● 不妊症(その他「周期療法」について)

 男性の生殖機能に異常がみられず,あるいは避妊をしていないにもかかわらず,夫婦が同居して2年以上経っても妊娠しない場合,あるいはまた避妊をしていないにもかかわらず前回の妊娠から2年以上経過しても妊娠しない場合を「不妊症」と呼んでいます。
 不妊症には,先天性のものと後天性のものがあり,先天性の不妊症は薬物治療が困難であるとされています。
 不妊症の治療に関しては,現代医学的には近年「人工受精、体外受精、顕微受精」などの方法が用いられますが,いずれも成功率が低く,とくに「体外受精や顕微受精」では比較的重い精神的苦痛、肉体的ダメージ、経済的苦痛を伴います。この中でも肉体的ダメージは最も大きく,さらに保険が適用されないことから経済的負担が生じるため,治療に対しての障壁となります。しかし,それでもなお“子供が欲しい”という一心でこれらの苦痛を乗り越えて治療に挑戦する夫婦が大勢います。
 不妊症に対しては,現代医学(西洋医学)による治療法ばかりでなく,漢方医学の考え方による治療法(つまり,漢方薬による治療法)もあります。漢方治療では上述のような精神的苦痛、肉体的ダメージ、経済的負担が少なく,このことに限っては理想的な治療法と言えます。

 漢方医学では,不妊症の原因として大きくは“腎虚、肝鬱、痰湿、血”の四種の病症パターンが存在すると考えますが,これらの病症が比較的複雑に混在するケースが最も多く見られます。この病症についても,他の病症と同様に先ずは全身状態(体質や生活習慣など)も考慮し,調和が乱れている部分を中心に整える必要があります。

【周期療法について】
 漢方薬を用いた治療法の中には,西洋医学を漢方に応用した「周期療法」があります。これは「基礎体温」を参考に月経周期を正常にし、妊娠を妨げている原因を取り除き、母体と子宮の異常を改善して妊娠しやくするという方法です。しかしながら,これは西洋医学が基盤となっているため,伝統的な本来の漢方医学の特徴が生かしにくいため,当店ではやはり漢方を基盤として,先ずは全体の調和を目標に治療を進めます(ただし,「基礎体温表」は参考に致します)。

 この他,近年の不妊症には男性側が原因となっているケースも多く見られ,不妊症の原因の3分1は男性側にあるとも言われています。専門医の診断で不妊の原因が分からないと言われた場合などに漢方薬を使用し,妊娠し易い身体づくりに専念して頂きたいと存じます。治療に必要な漢方薬はございますので,ぜひ一度ご相談下さい。

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● 不育症(流産癖など)

 正常に妊娠するが,胎児を育てる機能がある種の原因によって低下あるいは不足しているということです(流産や未熟児の出産などでして,不妊症とは厳密には異なります)。畑に例えますと,良質の種をまいたが土が悪いためにうまく育たない状態です。漢方医学的には実に様々な原因が考えられますが,その多くは不妊症の原因と近似しています。この治療も例外なく全身的な視野で進める必要があります。また,生活面に改善すべき点があれば,その点についても充分に配慮する必要があります。

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● 乳房のシコリ

 月経期になると乳房にシコリが現れ,あるいはシコリが大きくなるという方が見受けられます。一般には乳房の脹りも同時に見られます。また,酷ければ乳腺炎を併発するケースもあります。また時には,乳癌に変化することが考えられますので,体質改善的な治療をお奨めします。これも漢方で改善できます。

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● つわり(悪阻)

 本病は,妊娠初期の3ヶ月前後に現れる,“嘔吐”を主症状とした病症です。症状の程度には個人差があります。しかし,程度の激しいものは食事が取れなくなり,母体の栄養補給にも影響が及びますので,いつまでも放っておく訳にはまいりません。症状を抑える漢方薬がありますので,辛いときは利用すべきでしょう。

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● 不正出血

 本病は,月経時以外に発する病的な出血症状のことです。異常に長く月経様の出血が続くものもこれに含まれます。その色合いについては,鮮紅色、薄い赤色、濃い(暗い)赤色、少量、多量など様々です。漢方では,これらの症状特徴と全身状態を考慮して処方を選定します。他の症状に発展させないため,早めに改善させましょう。

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