これは男性特有の泌尿器疾患です。本病には,大きく分けて「前立腺肥大」と「前立腺炎」があります。
【前立腺肥大】
主に中医で言う「腎」の機能低下による病症でして,高齢になるほど現れやすい傾向があります。
およそ五十代から腺体が肥大して発生する病症でして,男性高齢者の七〜八割が罹(かか)ると言われています。四十代でも現れ始めることがありますし,稀に二十代の若年世代でも見られることがあります。一般的に,若い時には滅多に現れない症状ですから,一種の老化による病症と考えて良いでしょう。
これだけでは痛みや血尿などは見られませんが,前立腺が肥大して尿道を狭め,また肥大した前立腺が膀胱内にまで盛り上がって入り込むという現象が生じることもありますので,「頻尿、尿の出が悪い、尿線が細く勢いがない、尿の切れが悪い、残尿感、下腹部が重苦しい、鼠径部(下腹部〜股関節周辺)が痛む、冷えると悪化する、足腰が痛怠くあるいは重怠くて力が入らない」などの症状が生じやすくなります。
症状はおよそ次の三期に分けられます:
第一期:夜間の排尿回数が増える。2回以上。わずかに排尿困難があるが,残尿は無い。
第二期:頻尿や排尿切迫(尿意逼迫)があらわれ,残尿があり,排尿困難が顕著となり,ときに突然尿が出なくなることがある。
第三期:膀胱が収縮能力を失い,膀胱の中に尿がたまりすぎて自然に漏れるようになる。この時期には腎機能にも障害が見られるようになります。これが更に進みますと腎機能不全や尿毒症を起こして生命にまで危険が及びます。
このように,前立腺肥大は単なる尿の排泄異常だけの問題ではなく,全身的な意味合いを持つ病気でもあります。
【前立腺炎】
前立腺炎には急性のものと慢性のものがあります。
急性の場合は膀胱炎に似た「残尿感、排尿痛、血尿(潜血を含む)」などの比較的激しい症状が現れます。
慢性の場合は現れる症状は急性のものと似ていますが,程度は比較的緩慢です。初期の内は排尿に違和感があるといった程度の軽い症状ですから,すぐに治療を受けるという気にはなかなかなれず,つい悪化させてしまうというのが現状のようです。また,気軽に専門医に相談できる病気ではないことも治療を遅らせる一因と考えられます。
高齢化社会を迎え,前立腺の病気が益々増加する傾向にありますし,それと共に「前立腺癌」の発生率も高まっていますので,早期に治療を始めるべきでしょう。慢性の場合は特に漢方治療が望ましいです。
本ページは「泌尿器疾患」中の記事とほぼ同じ内容です。その他の泌尿器疾患についても述べておりますので併せてご覧ください。
更新:2023/07/22