慢性化した皮膚病には漢方治療が向いています
皮膚病は症状が体表面に現れる病気ですが,その原因の多くは身体の内部に存在します。
中医理論では,皮膚病は外界から侵入する外邪(例えば,風、熱、湿、燥など)と体内に発生する内邪(例えば,内湿、内熱、内燥など)が原因になっていると考えます。この考え方は,急・慢性,あるいはアレルギー性か否かは差ほど問題にしません。中医で治療を行う際には,これらの病邪の内どれが関与しているかを症状特徴から判断することが重要となります。
当店での漢方治療では,中医理論ではなく漢方の考え方を中心に行います。つまり,個々人の病状に必要な基本処方が何かを探り,最低でもその基本処方が含まれている(可能な限り過・不足の無い)漢方製剤を選定します。また,発症や悪化には体質や生活習慣なども影響しますので,必ず全体的な視野で病状を把握しなければなりません。
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▼ アトピー性皮膚炎 ▼ にきび ・ 吹き出物 ▼ 頭皮 ・ 顔面の湿疹 ▼ 蕁麻疹(ジンマシン) ▼ 陰部掻痒症と陰嚢湿疹 ▼ 帯状疱疹(帯状ヘルペス) ▼ 肛門のカユミ(かゆ痔・肛門周囲炎) ▼ 寒冷蕁麻疹(ジンマシン) ▼ 老人性皮膚掻痒症 ▼ しもやけ ▼ 皮膚湿疹(アトピー性皮膚炎を除く) ▼ 皮膚の知覚異常(シビレ感など) ▼ 脂漏性湿疹 |
「アトピー性皮膚炎」とは,皮膚病の中でも特にアレルギーによって引き起こされる湿疹などに対して名付けられたものです。
アトピー(atopy)とは,ギリシャ語のatopic(異常)が由来と考えられておりまして,原因がはっきりとしない複雑な状態を暗に意味として含んでいます。そのため,現在に至っても難治性の病症とされています。また,アレルギーというのは,ある特定の物質(アレルゲン)に対する過敏反応のことです。
乳児期や小児期での発症が多く見られ,その後の成長と共に落ち着くこともあれば,大人まで持ち越すケースもあります。また,幼児期に現れなくても,さらに成長した段階あるいは青年期、壮年期、老年期になって初めて発症することも少なくありません。
「アトピー性皮膚炎」には大きく分けて乾燥性のものと湿潤性のものがあります。前者は空気が乾燥する秋から冬にかけて発症しやすく悪化しやすい傾向があり,後者の場合は暑熱の盛んな夏季に発症しやすく悪化しやすい傾向が見られます。
現代医学の治療では,その人のアレルゲンを確認し,それを注射してこれに対する過敏性を取り除くという方法(減感作療法)を用いることがあります。しかし,この方法は長期にわたる通院治療と根気が必要ですし,多種のアレルゲンを持つケースでは効果が不充分であるなどの問題を抱えています。また,食物アレルゲンがある場合に,それを一定期間摂取しないようにして,その食物に対する過敏性を取り除くという方法(一種の食事療法)もありますが,多種の食物アレルゲンがある人にとっては実行が困難です。この他,ステロイド(副腎皮質)ホルモン含有の軟膏を塗ったり,抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を服用する方法もありますが,いずれも効果が一時的であり副作用のリスクも否定できません。
中医では,そのほとんどの病症が“風湿熱(ふうしつねつ)、血虚風燥(けっきょふうそう)”と称される病症に属すものと理論づけられています。
当店での漢方治療では,やはり先ず体質や全身特徴に基づいて大分類し,その後,全身性・局所性の区別、痒みの程度、患部隆起の有無、乾燥と潤いのバランス、浸出液の有無、患部の熱感(発赤の程度)、季節の影響、女性では月経との相互影響など細かな情報に基づいて必要なお薬を選定します。
「気管支喘息」や「鼻炎」などを併発していたり,同時に胃腸病も見られるケースが比較的多いですが,できる限りお薬を増やさず一緒に改善できるよう心掛けております(場合によっては優先順位に沿うよう順番に治療を行うこともあります)。
更新:2023/07/29
中医理論では,五臓で言う「脾(胃腸)」、「肺」、「肝」の機能異常が主な原因と考えます。つまり,「胃熱(いねつ)、肺熱(はいねつ)、肝胆湿熱(かんたんしつねつ)、肝鬱火化(かんうつかか)」などの病症と関わっています。また,「風熱(ふうねつ)、便秘(べんぴ)」などの病症とも関連性があり,これらは本病を悪化させる要因にもなります。
女性の場合は月経と深く関わる場合もあり,月経が近づくと体調変化の影響により,にきびが増えたり悪化したりすることがあります。
「にきび・吹き出物」ができやすい人は,飲食の習慣に改善すべき点があります。
日頃は便秘しないよう心掛け、脂っこい食品、チョコレート菓子、ピーナッツ、コーヒー、チーズ、バター、アルコール飲料、トウガラシ料理などの過食や過飲を避けることです。
満腹状態が続くと「胃熱」が生じやすくなりますので,腹八分目(肥満で胃拡張の傾向がある場合は腹七分目)で済ませることも大切です。
このように「にきび・吹き出物」では,炎症は皮膚面に現れますが,その原因は体内に存在しますので,根本治療としては体内に潜んでいるこれらの原因を取り除かなければなりません。
残念ながら,好きなものを好きなだけ食べつつ「にきび・吹き出物」を消し去ることはできません。
現代医学では,直接の原因は“ニキビダニ”または“顔ダニ”と呼ばれる常在微生物によるものとされています。腸内細菌と同様に,洗浄してもまた現れては増殖します。洗浄を繰り返す内に大切な皮脂が損なわれ,同時に免疫が低下して感染症を患いやすくなったり,乾燥による肌荒れやクレンジングの摩擦による皮膚炎などが生じることも多くなります。衛生的に保つこと(※)はある程度必要ですが,程々にしましょう。
(※)私が中国で留学生活を送っている際('94頃)に都市郊外の農村に出かけたことがあります。なかなか衛生的とは言えない環境でしたが,そこに住む方々は多少日焼けはしているものの皮膚の状態はとても良かった記憶があります。決して裕福な生活ぶりは感じられなかったので,栄養豊富なものを毎日お腹一杯に食べるようなこともされていなかったでしょう。
これら皮膚の外側に棲む微生物は,皮膚の状態が良い内は暴れずに大人しくしているようです。皮膚の状態をコントロールしているのは主に身体の内側ですので,やはり内側を安定させることが何よりも大切と考えます。
更新:2023/07/27
頭皮や顔面の皮膚病で乾燥あるいは湿潤を呈し,カユミが強く,慢性化し,治療を続けているがなかなか改善を見ないというケースが多々あります。長期にわたって患部に対する対症療法だけを続けている場合によく見られる現象です。その様な場合はもっと内面の改善が必要ですし,生活面のチェックも必要です。皮膚病は皮膚表面に炎症が現れる病症ですが,とくに慢性化したものは内臓との関連性も考慮し,全身的な視野で病気を捉えて治療を進めなければなりません。とくに食生活面のチェックは非常に重要です。また,全身状態や患部の状態によって,例えば患部が赤くなっているか,分泌物があるか,乾燥しているか,胃腸の具合はどうか,便の状態はどうか(軟便・下痢か便秘かなど),舌の苔の状態はどうか,など詳しく観察して治療法を判断しなければなりません。
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本病には急性のものと慢性のものがあります。しょっちゅう発病するものは体内に潜む原因を考慮する必要があります。本病の発生にはとくに飲食面との関連性が考えられます。温熱ジンマシン、寒冷ジンマシン、食物性ジンマシン、ストレス性ジンマシンなど多くの種類があります。
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「陰部掻痒症」は下腹部下端から肛門周囲に掛けて生じる皮膚病(皮膚・粘膜疾患)で男女共に発症しますが,特に女性に用いられる病症名です。
「陰嚢湿疹」は名前のとおり男性に発症し湿疹が現れるものを指します。「疹(しん)」は点状の,また「斑(はん)」は面状のもの(この場合は発赤)を言います。
どちらも比較的強い痒みを伴い,皮膚としては最も湿気や熱が籠(こ)もりやすい部位で生じ,基本的な治療法も似ています。また,他の炎症を伴う皮膚病と同様に,肥満(特に水太りで,患部の摩擦が多くなる)、過食、便秘、酒類の過飲(この3つは三大熱源です)などで悪化しやすく治りにくくなる特徴がありますので,治療の一環として服薬以外に日常のケアも不可欠です。
身体の内側に原因がある場合(中医では「下焦湿熱(げしょうしつねつ)」または「湿熱下注(しつねつげちゅう)」と呼びます),多くは“尿が濃い、排尿痛、排尿時の熱感、尿が濁る”などの排尿異常を伴い,追加の薬が必要となります。更に女性の場合では帯下(たいげ:おりもの)の量、色、臭いに影響したり,重い場合は患部が爛(ただ)れることもあります。
この他,圧倒的に女性に多い病症としてカンジダ症(膣炎)やトリコモナス症などの日和見(ひよりみ)感染があります。日和見とはこの場合,何らかの原因によって抵抗力が衰え,傷付いた組織の修復が自力では追いつかない情況です。
現代医学では一般に洗浄したり抗生剤などを使用して,これらカビ、細菌、ウイルスなどを取り除く治療を行いますが,日和見状態が改善されていなければ再発を繰り返すことにもなりかねません。
漢方で改善できた例も多くありますし,急ぐ場合は現代医学と合わせた治療も可能です(例えば,洗浄したり塗り薬でつらい症状を抑えると同時に漢方で根治を試みるなどの方法があります)。
更新:2023/07/31
漢方医学で少陽胆経や少陽三焦経と言われる部位,すなわち脇腹部や腕の部位に発生しやすい症状です。ヘルペスウイルスによって皮膚に水疱や膿疱のできる病気で,激しい痛みを発します。体内に停滞した湿邪と熱邪が結合して形成される「肝胆湿熱証(かんたんしつねつしょう)」という病症です。発病時はトウガラシ・アルコール類・脂っこい物をできるだけ避けるようにしなければなりません。後遺症として肋間神経痛などを起こすケースもあります。
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肛門のカユミは,痔疾の一種である「肛門周囲炎」を起こしたときに発する症状です。カユミの激しいときはじっと落ち着いて坐っていることもできないくらいになります。乾燥性と湿潤性の違いがあります。また,男性の場合は“陰嚢湿疹”を,女性の場合は“陰部掻痒”や“黄色のおりもの”を併発しているケースもあります。
この症状は,体内に停滞する「水湿」と「熱」の結合によって形成されるものでして,「湿熱証」と呼ばれる病症に属します。そして,この“湿熱”が肛門周囲の皮膚粘膜に流注し,そこに炎症をもたらしてカユミを発生させるという訳です。この症状をお持ちの方は,日頃は便秘に注意し,油っこい食品・濃いお茶・コーヒー・アルコール類・トウガラシ料理などをできるだけ避け,菜食中心の食事に心掛け,食物繊維を多く含んだ食品を積極的に摂るようにしましょう。治療は一般には皮膚病の場合と同じ考え方ですすめます。たいてのものは治りますので,お悩みの方は思い切ってご相談下さい。
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冷たい風に当たったとき、冷たい水に触れたときなどに発する皮膚湿疹のことです。患部には発赤がなく,ただカユミだけがあるというのが特徴です。漢方医学ではこれを「風寒湿疹(ふうかんしっしん)」と呼んでいます。また,中には掻くと幾分発赤が現れるというものもありますが,この場合は処方を少し変える必要があります。
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高齢者で普段から皮膚が乾燥する人に現れやすい症状です。一見して皮膚面に発疹などは見られないのですが,体が温まると突然カユミを発し,一度掻き出すとカユミは一層激しくなり,皮膚面は粉がふいたように白くなり,時には血が出るまで掻きむしってしまいます。カユミ止めの軟膏や内服薬ではなかなか治りません。治療効果は,化学薬品より漢方薬のほうがはるかに優れています。
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本病は,一般に冷え症で手足の血液循環の悪い人に現れやすい症状です。中には重症のものもありますので,病状に適合した漢方薬を使用しなければなりません。
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ここでは特に慢性化した皮膚湿疹についてお話ししましょう。皮膚病については,漢方医学ではこれを「風湿熱証」と呼んでいます。これはすなわち,風・湿・熱という3種類の原因が関与して発するという意味です。
○「風」が原因の皮膚病は,身体の主に上部あるいは広範囲に発します。
○「湿」が原因の皮膚病は,身体の主に下部に発します。分泌物があります。
○「熱」が原因の皮膚病は,身体の主に上部に発します。患部が赤くなります。
○「湿熱」が原因の皮膚病は,全身に発生します。患部が赤くなって分泌物を伴います。
皮膚病は,患部が皮膚面に存在しますが,慢性化したものは体の内部にも原因が潜んでいますので,その点を考えて治療しませんと,満足のいく効果を得ることはできません。
その他,身体のある一定の箇所だけに炎症を発するという皮膚病もあり,この場合は内臓との関係を考慮する必要があります。
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シビレの症状は一般に血液循環障害によって発生しますが,この症状は痛みの症状の一段階軽い病状と捉えたほうが良いと思います。実際に,最初はシビレ感が強かったものが,その後次第に痛みに変化したというケースがあるからです。時にはシビレ感が麻痺症状に変わったという例もあります。いずれの場合も,できるだけ早く治療すべきでしょう。
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頭皮や顔面などの皮脂の分泌が盛んな場所に現れる皮膚病です。患部は赤くなり,表面の皮膚がはがれたようになり,頭皮の場合はフケが多く現れます。乾燥傾向のはっきりしているものと炎症傾向が強く見られるものがあります。また,これらの病状が混在するものも見られます。治療では,患部の症状特徴や全身状態を念頭において処方を考えなければなりません。漢方薬で充分に治療できますので,どうぞ私共にご相談下さい。
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